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恋文

彼女は決心した。
明日、空港で手紙をこっそり、彼のカバンに
入れてしまおうと。

遼寧へ旅立つその人の周りには、いつも大勢の人が
集まってくる。
見送りの人数はきっと15人はいるだろう。

でも、彼女はきっと、一瞬の隙をつき、自分の意志を
貫けると確信していた。

数日後、届いた返信の万年筆で書かれた文字の美しさに
彼女は大きく目を見開いて、驚喜した。

どうすれば、こんなに奇麗な文章を書けるんだろう。
彼女の気持ちに、くっきりと応えてくれた言の葉、
どれもが魂にひびいた。

恋は実った。

丸顔の優しい奥様に、胸の中で手を合わせて
ごめんなさい、ほんの少しだけ、私と時間を
共にする事、許して下さいと念じた3年間。

生涯で一番幸せな日々だった。



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